2010年9月4日土曜日

フライ,ダディ,フライ

 友人宅にてビデオ鑑賞。パッケージ見る限り、青春物かなと思っていた。
 内容は娘を暴行された父親が、とある青年の手ほどきを受け復讐を果たすというもの。一介のサラリーマンだった親父が、娘のために喧嘩の特訓を受けて強くなるのは、ロッキーやベストキッドなどと同じような、よくあるストーリー。
 よくあるということは、逆に言えばうまくやれば楽しめるストーリーということ。しかしこの作品ではあまりシンパシーを感じ得ず、駄作だと思った。

 低予算だろうことは、セットを見れば一目瞭然なのだが、例えばロッキーも低予算だったことが有名な作品で、こうした作品にとって、予算はあまり関係ないだろう。
 しかしロッキーにはスタローンが当時抱えていたであろう悩みや苛立ちといった、本物のもつ魂が吹き込まれていた。だから面白い。だから最後のランニングシーンでエキストラが集まった。スクリーンで見ていてもそこにリアルを感じる。

 しかしこの作品にそれはない。出演する役者たちに屈託がないからだ。
 木から落ちるシーン。本当に落ちる必要があると思う。クッションなどを引いて。落ちる真似だけしてストップするから、真実みを感じない。
 つま先だけで階段を上がりきるシーンも、下から本当に上がらないからリアルじゃない。もちろんそんなことは出来ないんだろうけど、それに近いくらい演技をするべき。どう見てもその後に続くやりとりのせいか、役者に気をつかってなのかわからないが、ほんの数段を登らせただけで、上がりきった!とやっている。感動できない。
 この映画の演出は全編にわたってこうしたうさんくささを感じてしまう。だから説得力がないのである。この監督は相当能力がないなぁ。

 復讐される側の須藤元気にしても、暴力シーンだけしか描かれないかず、その内面を掘り下げることがないからよくわからん。金持ちで政治家の息子でボクシングのチャンピオン。どんだけステロなんだよ。
 主人公を教える青年も格好はいいかもしれないが、彼自身の葛藤などは描かれず、過去について少しだけ独白するシーンがあるだけ。二人の交流。親父から青年へ与えた何かについて、もっと描けばいいのに。
 結局、人気の役者とアイドルを使った青春映画でしかないと思った。

 まぁこうした映画はそれこそ腐るほどあるわけで、別に市場が存在するんだからいいが、問題はこの作品を「最高」とまでは言わないまでも、賞賛を与える奴。はっきり言って映画を語る資格ないぜ。

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