2016年1月7日木曜日

スターウォーズ フォースの覚醒

 年末年始は忙しく、昨日やっと「スターウォーズ フォースの覚醒」を観に行けた。タイトルにはエピソード7ってつかないのね。21世紀フォックスからディズニーへ版権が移動したことが原因なんだろうな。開始後冒頭ながれるプロローグにはしっかりエピソード7って書かれていたけど。

 スターウォーズは最初の「新たなる希望」からずっと映画館で観ている世代なので、ルーカスが降りた新三部作にはちょっとがっかりもし、心配もしていたけれど、当初は全9部作と吹聴していたわけなのでこれもありか。
 当然のことながら予告、事前情報完全シャットアウトで劇場に駆けつけた。

 見終わって思ったのは、「新たなる希望」の焼き直し?というもの。ネットでの評判も気になったので幾つか見て回ったがやはり同じように思った人も多いみたい。

 ・ドロイドに重要な情報を仕込んで砂漠の惑星に逃がす
 ・それを手に入れた若き主人公が砂漠の惑星を飛び出す
 ・しかし宇宙船は拿捕される
 ・そこから逃げ出すものの、見せしめとして本拠地の惑星が破壊される
 ・デススターを破壊せよ!

 うーん、まったく同じと言っていいかも。

 砂漠や森の上でミレニアムファルコンとTIEファイターが空中戦を繰り広げるあたりはミニチュアを使った昔のSFX的手法では実現できなかったであろうし、CGっぽさ全開だったプリクェルとは違ってリアルな感じだった。
 主人公のヒロイン「レイ」も心の強さと可憐さを併せ持っていて共感できる。アクションもそつなくこなしていたし。女性主人公ってのはどうなの?という感じはあるけれど。
 一方相棒のフィン、適役のカイロレンあたりはちょっとなぁ。BB-8は人気が高いようだが個人的には狙いすぎている感がしてしまってどうも。

 というよりストーリー。「帝国の逆襲」であったダースベイダーがルークの父親だったという謎。これに引っ張られすぎているように思う。別にミステリーと伏線が売りのシリーズだったとは思えないんだよね、スターウォーズ。
 いまでこそ三部作、エピソード1から数えれば六部作という長編になってしまったから、謎めいた部分を作っておかないと次作への興味が削がれるという事情はあるのだろうが、本来スカッと爽快な冒険活劇のスペースオペラ版。あるいは幻想世界で紡がれる子供向けファンタジーのスペース版だったんじゃないの?
 それがいつの間にか「フォースのバランス」とか登場する兵器、悪の枢軸(笑)なんかに主眼を置くようになってしまって分かりやすい楽しさが減ってしまっているように思える。エピソード4なんてかなりの馬鹿映画だけどねぇ。
 それでいて旧作が素晴らしかったのは、田舎で燻る都会を夢見た若者が、ひょんなことから平和で退屈な我が家を飛び出し、大冒険に出掛けるという物語にこそある。
 それこそジュブナイルによくある普遍的ストーリー。子供から大人へ。籠の中から自然へ。川から大海原へ。そこには危険が待ち受けているかも知れないけれど自由こそあれ。そうした成長の物語に惹かれる。
 しかし今作は「謎」に拘泥するあまり主人公レイの人となりはほとんど描かれず、いや敵役であるレンも、相棒フィンもおよそほとんどの登場人物のストーリーは口先だけの説明だけで終始してしまう当たりが良くない。
 エピソード4ではもの悲しいメロディとともに、砂漠に沈む二重太陽を見つめるルークスカイウォーカーがそのテーマを表していたし、アナキン三部作にいたってはエピソード1~3すべてを使ってアナキンを描いたのに比べると、登場人物の掘り下げが弱く感じさせられ、そこがスターウォーズらしさ、一大叙事詩的部分が薄らいだように感じた。
 そうした部分をはしょった分、アクションシーンを多目にし、Xウィング格好良いでしょ?ハンソロがんばってるでしょ?と言わんばかりな展開は個人的にはどうにも納得いかなかった。

 ルーカスがもしエピソード7を作ったらどうなったか?きっとアイデアは枯渇していて書けなかっただろうね。成功者のルーカスが成功したまま終わった人生を振り返っても新しいエピソードにつながらなかったのだろうと思う。だから彼は当初九部作を六部作でよしとしたわけだし。
 スピンオフで描かれた続編小説はどれもルークと女性ジェダイのロマンや、ルークの暗黒落ち。ハンソロとレイアのロマンスの行方や子供がジェダイになるといったもので、一部は「フォースの覚醒」でも取り入れられているようだがどれも一大叙事詩というより外伝的ストーリーぽい。

 ラスト。ハンソロは予想通りカイロレンに殺される。殺される場所が場所だけに、絶対刺されるなと思ったら案の定。デススターの大型新型も過去と同じような攻撃方法で、同じようなタイミングに破壊されるし。予定調和ってやつ?狙ってやったのかな。

 そもそも「ファーストオーダー」ってのがいきなりの出現過ぎて意味不明だし、共和国があるのにレジスタンスがあるってのもよく分からないし、世界の説明もすっ飛ばしすぎだろ。エピソード6で銀河皇帝倒してハッピーエンドになったはずなのに。
 出自を謎にしたいのはわかるが、ファーストオーダー成立の経緯をもう少しきちんとやって欲しかった。ルーカスは銀河帝国設立に三作も掛けたんだよ?(かけ過ぎ)
 エピソード1のように今作はエピソード6から30年後の世界を描写して、新たなる脅威(ファーストオーダー)が結成される経緯を書けば良かったか。ルークの元に託されたカイロレンが何故闇落ちしたのかとか。まぁエピソード1~3をなぞるだけの物語になってしまうから一緒か。
 さすがに本拠地ふっとばしてハッピーエンド。レイアがみんなを表彰して終わりじゃまずかろうと、レイがルークと対面する所までは蛇足のように続くが、確かにこれで次作を観なきゃって気にはなるけれど、スターウォーズじゃなかったらこの終わり方は許されないでしょうね。
 
 振り返って思い直すとひどい映画だったな。新三部作の第一部だし、ルーク、ハンソロ、レイアが出てきたし、アクションシーンも豊富で旧作のオマージュが散りばめられていたから強烈な駄目出しはないでしょうけどね。エピソード2の時のような。
 ただ今回はリブートということで制作陣も冒険できなかっただろうことは想像できる。多くのファンの中にある「これがスターウォーズ」というものを万遍なく拾っていかねばならなかっただろうから。ルーカスが作るエピソード7じゃないから、文句を言われてもこれが正しいのだとは言い切れないだろうし。
 そう考えればやはりエピソード8,9と見終わって新たな三部作が終わってみなければ結論は出せないか。

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