ナイトオブザリビングデッド
記念すべきロメロゾンビの第一作。モノクロ映画でいかにも古いという感じ。ただしロメロゾンビ独特のストーリーはこの作品から確立されている。つまりゾンビが主役なのではなく、その状況におかれた人間模様が主題ということ。せっかく助かったはずの黒人主人公がゾンビと間違えられて射殺されてしまうアンハッピーエンドも良い。
ナイトオブザリビングデッド 死霊創世記
盟友トムサビーニを監督に据えたリメイク版。元作は版権取得の手違いで著作権放棄作品となっていることから、きちんと作り直そうということで持ち上がった企画らしい。そのためか基本的なストーリーは原作に忠実だが、途中から新しいエピソードが加わるという感じ。また無理に作った感じもせず上手く作り直されている。前作では精神に異常を来したのか、ただ叫んでいるだけのバーバラを膨らませ、戦うヒロインに位置付けたのは時代の違いもあるか。
原作はモノクロだし、どうしても古さが目立つので、こっちを見ればいいのかな。
ゾンビ
個人的にはゾンビ映画のベスト。何度観ても飽きずに観てしまう。それはゾンビはただの設定であり世界観でしかなく、テーマは人間ドラマにあるからなのだろう。壁ひとつ外ではまさに地獄絵図だが、閉鎖されたストア内では欲望のままをふるうことが出来るとか、実際自分がこの状況に追い込まれたらどうしようかと思わせるところがうまい。
ドーンオブザデッド
ザックスナイダー監督によってリボーンされた一作。巨大モールに立て籠もった面々のお話しという点では一緒だが、ストーリーはかなり異なる。やはり走り回るゾンビというのが最大の違いで、これがあるために原作のような、立て籠もっていれば大丈夫だろうとか、崩れた穴が徐々に広がっていきやがて崩壊してしまうといった無常観は感じられず、映画の世界に入り込む余地がない。
立て籠もる人数が増えたことで個性が見えなくなり、かつ馬鹿な行動をする者が多すぎて感情移入もできない。
駄作の多いゾンビ映画というジャンルにおいては、エクストリームアクションゾンビと割り切って楽しむことはできる。
死霊のえじき
ロメロゾンビ三部作の最終話。すでに世界はゾンビに制圧されている感があり、地下基地に立て籠もる主人公たちの閉塞感が映画全体を覆う。何をやっても希望がない。新たなコンセプトとしてバブというゾンビが登場。ゾンビとコミュニケーションをとるというエピソードが入った。これを良しとするかどうか。個人的には好かない。やはりコミュニケーションのとれない得体のしれない化け物としてのゾンビの方が怖いからだ。
最期のグロシーンは見ていて不快感の極み。救いのない映画だが、だからこそゾンビ映画だという観方に立ち返れば、この終末感ただよう映画は一つの金字塔というか到達点なのかもしれない。
デイオブザデッド
名前だけ借りたB級ゾンビ映画。ゾンビはドーンオブザデッド同様走り回るタイプ。ヒロインの女性軍人がわりと可愛いくらいで特筆することろのない作品だなあ。
ランドオブザデッド
ゾンビ映画が人気となったからか、20年ぶりにロメロ監督が撮ったゾンビ映画。ユニバーサルが配給。デニスホッパーなど有名俳優出演。潤沢な製作費。しかしロメロゾンビの暗さ、終末感は薄らいでしまったか。ゾンビ映画というよりはアクション映画ぽい。高層ビルに住む富裕層とスラムと化した貧民層という舞台だが、その対比はあまり描かれることなく、装甲車を奪い返すというストーリーがメインで進む。ラストのゾンビ大行進も富裕層だけが襲われるわけでなく、貧民層も同じように襲われてしまい、勧善懲悪な感じや皮肉めいた場面でもないのが残念。
またふいにゾンビが現れて噛まれるというシーンが多すぎて、すぐに噛まれない厚手の服を着るとか何とかすればいいのに、なんて突っ込み入れてしまいたくなるくらい。
ダイアリーオブザデッド
POV手法を取り入れたのは良し悪し。臨場感はあるけれど、ストーリーが良いのだからきちんと撮影した方が落ち着いた映画になったんじゃないかと感じる。ただし映画の中でもふれられる通り、誰でも手軽に情報を発信できる世界に対するテーゼなので、フェイクドキュメンタリーという手法なしでは成り立たなかったのか。
逃避行を続ける学生たちが、様々な場所でいろんな出来事に遭遇するという放浪ものとなっているが、見せ場が散らばってしまった感はある。特にラストの邸宅に辿り着いたあとは時間の都合かゾンビの中を生き延びたとは思えない杜撰な行動ばかりなのが残念。
溢れるほどのゾンビの大群というシーンがないからか、暗さや終末感も薄く、なんか淡々とした映画である。いろいろ残念だったな。
サバイバルオブザデッド
現在の所、ロメロゾンビの最終作。前作の兵隊が主人公ということで、明確な続編となっているが、これはフレーバー要素的なもの。もはや三部作の時のような閉塞感はなく、ゾンビの存在も認知されているというか怖さもあまりないのが残念。主人公たち一行が向かう島ではゾンビを飼い慣らそうとする保安官一派がおり、この辺もゾンビの恐怖を薄めている原因なのだろう。
ゾンビ映画はそれこそピンキリで、面白いと思わせるものは少ない。そんな中、人間ドラマを物語の中心に据え付け、ゾンビはあくまでも世界設定の一部とするロメロゾンビ映画は見応えがある。
ゾンビに限らず、化け物の登場するホラーは、その存在が中心となり、これに対してどう生き延びるかがテーマになってしまう。しかしロメロはそこに生きる人間たちが何を考えてどう行動するかがテーマとなっているため飽きずに観ることができるのだろう。