2011年12月31日土曜日

山本五十六

 予告編で映った長門が格好良かったので、さっそく観てきました。残念ながらあまり戦闘シーンは描写されず、山本五十六の描写が中心でした。もっとも太平洋戦争時、艦隊決戦はほとんどなかったと言っていいわけだから仕方なし。

 山本五十六がアメリカとの開戦に対して反対していたことや、いざ戦争となって以降も、早期講和を考えていたことなどのエピソードが綴られる。

 御上のやらかした戦争のせいで、国民が辛酸を舐めたといったこれまでの戦争映画に対し、出口の見えない日中戦争と不景気から、国民もアメリカとの戦争を望んでいたという切り口。小林信彦も当時の世相について同様の事をエッセイで述べていたが、事の真偽はともあれ、被害者意識を持った描き方と比べて新鮮であった。

 いざ開戦。初戦における真珠湾奇襲攻撃の成功など、反開戦派だった山本長官に対し、手のひらを返すように褒め称える国民性の不条理など、大衆心理を皮肉った描写は、今の世相に対してもそのまま同じ事が言えるのではないか。

 しかし山本長官の高い見識や先見性を謳うあまり、他の人物が卑小に書かれすぎか。南雲中将の件しかり、山本長官自身も良い点ばかりではなかったはず。戦後何年も経って、当時の情報や結果を知っている私たちだからこそ分ることも多い。
 戦争へと至る経緯についても、開戦派の言い分が全く描けていないのは残念。自虐史観ばかりでなく、やむをやまれぬ思いで始まった部分も本来は書くべきだったのでは。その辺が公平な視点で書かれていないので、贔屓の引き倒しに感じてしまった。
 歴史を元にした物語という認識を、観る側が持ってくれればいいのですがね。

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