庵野秀明による「シン〇〇」の最新作。
今作も時折公開される予告編以外の情報はしっかり遮断され、どんな内容になるのかと期待を煽る作品だった。また仮面ライダーのビジュアルも、暗めの演出とコートを羽織るといったダークヒーロー的演出で、改造人間にさせられた主人公の悲劇が描かれるのだろうかと思った。
舞台挨拶のライブ配信がある公開初日に鑑賞。こんな役者さんたちが登場するのね、程度で知っている人がいない。
劇場の入りは初日とは思えないほど少なく、100人もいなかったのではないか。過去の「シン」シリーズであるゴジラやエヴァ、ウルトラマンに比べて少ないなと感じた。さすがに二番煎じ、三番煎じに取られ、飽きられてきたのか。
「仮面ライダー」の放送開始は1971年ということで自分は直撃世代ではない。ウルトラマンやゴジラも同様だが、怪獣が好きだったからかテレビで再放送を何度も観たし、怪獣図鑑などで脳内補完してきた。
一方ライダーシリーズは再放送もあったのだろうが記憶が薄く、思い入れはあまりない。同じような怪人図鑑や玩具の販売もあったが、自分ははまれなかった。
そんなファンでもマニアでもない自分の感想としては、時折り面白い演出はあったけれど、全体としてあまり面白くなかった。過去の「シン」シリーズと比べてあきらかにパワーダウンしているように感じられた。
ストーリーはかなり陳腐。とってつけたような心象場面が多く深みがない。これは「シン・ウルトラマン」同様、駆け足で進んでいくストーリー構成なので仕方ないのか。
特に役者の容姿に頼った演出で、確かにヒロインである浜辺美波は魅力的な女優だと思ったが、内面を掘り下げるようなエピソードに乏しい。ありがちなツンデレ設定も類型的で「ああ、ハイハイ」という感じ。
庵野作品にありがちな説明台詞も多い。「シン」シリーズ一発目の「シン・ゴジラ」や、それが後々の考察につながっていた「エヴァ」ではハマったこの演出も、「シン・ウルトラマン」における
「シン・ゴジラ」では画期的だった実写のアニメ的演出に慣れてきてしまったのか。
ライダーの戦闘シーンにおける暴力表現。吐血、人体欠損などは新たな試みとして良かった。CGは素人が見てもチープだが、製作費が少ないから仕方ないか。
バッタとの合成人間だから、ジャンプを多用。「飛んでクルクル回って」という演出が何度も繰り返されるのは最初新鮮だったが、さすがに途中から飽きる。
決め技「ライダーキック」の魅せ方はもう少しできた気がする。格好つけて何も叫ばないが、それこそ「トップをねらえ!」のイナズマキック的演出があれば爽快感を感じただろう。
暗い主人公「本郷猛」の掘り下げに乏しく魅力がないが、二番手「一文字隼人」はキャラ立ちしていて良かった。ラストの主人公交代に堪えうるかは疑問だが。
「シン・ウルトラマン」でも感じたが、この映画は誰に向かって作っているのだろうという気がした。子供向け番組であった矛盾点を細かな設定と暗いストーリーで誤魔化し、大人の鑑賞に堪えられるようにした結果、本来の対象者である子供向けではなくなった。
かと言って大人向けにしては内容が薄い。昔を懐かしむファンには楽しめるのだろうか?
庵野秀明の心にある「仮面ライダー」の格好いいシーンや思い入れを切り貼りしてつなげただけにしか見えなかった。・・・それがいいのか、それが庵野作品か、とも思ってモヤモヤする。
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