2025年7月2日水曜日

28年後⋯

  ホラー映画「28年後⋯」を観てきた。走るゾンビ(感染者)の登場でゾンビ映画界に新風を巻き起こした「28日後⋯」シリーズの第三作目。閉鎖されたイギリス全島。その中の小さな島から始まる物語。
 シリーズ久しぶりの視聴なので復習のために「28日後…」と続編「28週後⋯」を鑑賞。
 「28日後⋯」よくあるゾンビ映画的展開が良い。すなわち平和な閉鎖空間が人間同士のいがみ合いで崩れゾンビの侵入を許して崩壊していく。
 「28週後⋯」はご都合主義的展開が残念。危険な感染者を軽視し過ぎで再発したパンデミックに対して対応が悪い。またあの危険な世界から逃げて来た父親に対して子供が冷た過ぎる。もっと優しくして上げればパンデミックも再燃しなかったろうに。
 さて今回は第一作の制作陣が戻ってくるということで雪辱戦。

 オープニングは第二作を思い出させる展開。閉じこもる屋敷が襲撃を受ける。丘を駆け下って襲い来る感染者を背景に少年が逃げる。ここへ放り込まれたら俺は一時間以内に死ぬなと思わせるような絶望的な世界。イギリス全島は隔離され、孤立した小島とそこで細々と暮らす村人が描かれる。掴みは良し。
 前半は成人の儀式として本土を探索する父と息子。ホラーFPSを思わせるような展開から父と子の確執と物語も良い。母と子による希望の旅は英国本土の美しい光景を垣間見るロードムービーとなっており第一作前半をセルフリメイクしているかのよう。
 ここまで触れてこなかった外部世界からの兵士が登場することで物語が急展開。希望であるはずだった「先生」との出会いは宗教的展開へ。何の映画を見させられているのだ、という戸惑い。
 ラストはギャグ風味でオープニングの伏線回収。なんと「28年後」は三部作として企画されているとのこと。今作の物語はきれいに終わっているが、小島の村人や父親のその後を描くのか、最後に出てきた「ジミーズ」たちの物語になるのか、どちらも興味ふかい。

映画「F1」

  ブラッド・ピット主演の映画「F1」を観てきた。近年大ヒットとなった「マーベリック」のスタッフによる製作ということも話題となっている。
 F1をあまり知らない人にとっては盛り上がるのかも知れないが、90年前後のF1ブームを体感している身としては荒唐無稽な部分が多すぎて、もはやファンタジー映画。乗り切れなかった。

 ブラッド・ピット演じる「ソニー」の駆るF1マシンがデッドヒートの最中、原因不明のクラッシュ。昔F1を観ていた世代には、懐かいキャメルロータスのクラッシュがマーティン・ドネリーの悲劇をモデルにしていると気付く。
 壮絶な事故の後、ドネリーはリハビリの甲斐もなくドライバー生命を絶たれたが、映画のソニーはデイトナ24時間耐久レースに優勝を導くなどカムバック。その勝負強さを買われて、弱小F1チームの代表を務める元同僚ルーベンからF1への復帰を懇願される。
 この出だしから「何これ、さすがに設定に無理があるだろ」と引いてしまう。主演ピットをドライバーとして成立させるために、同年齢のマーティン・ドネリーをモデルとしたのだろうが、現代の複雑怪奇なF1を60歳(劇中では50歳)のロートルが操るのは身体的、体力的にも無理でしょ。ピットの代表作「マネーボール」のように監督やマネージャー側にすることは出来なかったのか。

 F1復帰後の活躍もその手段がことごとくマンガチック。展開をわかりやすくするために予選をカットするのは良いとして、わざとクラッシュして遅延行為をしてみたり、ひとつの空力パーツを改良しただけで優勝争いが出来るほど性能が上がったり等など。F1を知っていれば知っているほど、これは…と引いてしまう。
 映画を盛り上げるための嘘は不可欠だが、さすがに許容範囲がある。ここまで来るとエンターテイメント的な嘘を超え、虚構世界のファンタジーと言い聞かせなければ観てられなかった。

 またロートルなベテランが最初は対立していたルーキーと和解。彼の成功を演出して身を引くというのが名作のよくある展開。この映画もそこへ着地の感動エンド…と思いきや、無茶な設定でピットをドライバーとした以上、栄冠を勝ち取ることまで決められていたんだろう。結局ソニーが優勝してエンド。わかりやすければそれで良しということ。大スター万歳!!という映画だった。