今日、車の修理と歯医者を終えた後、微妙に時間が残った。そこで本日から上映となった北野武の最新作「首」を観ることにした。
TOHOシネマズ、コロナワールドとも大スクリーンのフロアは他映画に抑えられてしまっていたものの、複数のスクリーンをあてがわれ、観客動員を増やそうと努力しているようだった。
残念ながら予約時に埋まっている席が初日、祭日にしては少なめで、前回の「ゴジラ-1.0」と比べるとさみしく感じた。
「首」は戦国期の本能寺の変頃を題材としている。明智光秀の謀反によって天下統一目前だった信長が討たれるという日本史きってのミステリー。人と違った独特の切り口を持つ北野武が原案・脚本を務め、どういった料理になるのか興味深かった。
また本映画が発表された当時から北野映画でヒットしたやくざ映画「アウトレイジ」の戦国版といった紹介がなされていた。血なまぐさい暴力表現と血で血を争う抗争が繰り広げられることなどが理由だ。
自分は「アウトレイジ」を一度しか見たことがなく、面白さもあまりわからなかったので、暴力的な刺激については興味を惹かれなかった。
物語は史実3割、空想7割くらいの感じで進む。時代考証はきちんとしていたし、登場人物も理にかなった配役となっていて違和感は少ない。ビートたけしの秀吉が浮いていたが、これは動員の都合など諸事情から仕方なかったか。
荒木村重の謀反というニッチな物語をきっかけに、「本能寺の変=家康暗殺」説をとるのは面白い。ただしその動機が跡目問題(家臣に継がせると思ったが、実子に継がせることにした)や「男色のもつれ」となっており、これはちょっと弱かったか。
当時は衆道が一般的で信長と前田利家、武田信玄と高坂昌信など有名な故事もある。しかし正面切って取り上げた映画は記憶がなく、センセーショナルである。ただし惚れた腫れたを原因として謀反する、謀反人を匿うというのは突飛な気がしてはまれなかった。
息抜き的にギャグシーンがちりばめられ、いわゆるビートたけしのドタバタ的ギャグなのだが個人的には大好きで笑えた。客観的には臭すぎてシラケるのだろうな。
またバイク事故以降のたけしは活舌が悪くてセリフは聞き取りにくいし、年齢的な問題をクリアすることもできず残念。集客の目玉として外せないキャスティングだったのだと思うが、他の誰かを配役することはできなかったか。この映画で一番つっ込まれるだろう。
さてどうやって物語を終わらすのかと思っていたが、首実検の件に映画のタイトルを絡めた痛快なオチとなっていて面白かった。主演の北野武が秀吉を演じているがあくまで傍観者に徹し、天下獲り物語になっていないのも良かった。